組織に馴染めず悩んでいるあなたにひと時の勇気を与えてくれます。
私も金融機関につとめる平凡なサラリーマンで、組織に馴染めないタイプですが、
どうしても同じような職業の人としか付き合わないため視野狭窄になりがち。
この本で、平凡に金融機関で我慢して働けることはすごいことだと勇気づけられます。
しかし、水木さんが言いたいのは、私の受け止め方とは逆に、人間にはいろんな価値観や生き方があり、他人の価値観や組織の価値観に馴染めなくても我が道を行けばよい。
という事だと思います。
私の世代の子供は多くがTVで「ゲゲゲの鬼太郎」を見ていたと思います。
そんな世代にとってご存じ水木しげるさんの自伝的作品。
ゲゲゲは当時子供心に、なぜこんな不思議な筋書きが書けるのか?
なぜこんなくすんだ暗くて怖い画をかくのか?疑問でした。
テーマソングが暗い。ゲッゲッゲゲゲのゲー なんじゃそれ
ゲゲゲを見た夜は怖くて寝付けない日がありましたが、そもそも子供が怖がる漫画をゴールデンタイムに放映して受けていた事が時代の流れを感じます。
例えば私の子供が見ていた「妖怪ウォッチ」などはキャラクターも可愛くて、ハッピーエンドやお笑いで落ちる物語が多く、怖がらせるようなものではありません。
昭和は人間には理解できない恐ろしいことが世の中にはあるかもしれない、全てが科学や合理性だけで割り切れないことがあるといったことが許容された時代だったのでしょうか。
しかし水木さんって40歳くらいまでは凄まじく貧乏ですが、生命力が強い。
人間が自殺するのは貧乏だからでなく、精神的な悩みが原因なんだろうと感じました。
かといって自殺される方が弱いという事でなく、水木さんが特別という事。
子供の頃から空想家で勉強は全くできず先生や親御さんからまともに学校で過ごす事は
諦められていた存在。
軍隊に入っても集団で規則正しい生活ができず人一倍殴られて危険な目に遇っています。
戦後も飢え死にギリギリの生活が続きます。
まあ、戦後は多くの人が食うや食わずでしたから特別でないですけど、普通なら健康を害したり、精神的に病んでいてもおかしくない状況だと思います。
そんな人生でも水木さんの筆にかかると飄々とした軽いタッチで描かれてしまいます。
それも無理に書いているのではなく、水木さんの人生観から自然とそのタッチになっている感じですね。
アメリカの軍人で戦闘で両足を失ったボブ・ウイーランド「腕で歩く」なんかを読むと、戦争で手足を失うことがどれほど痛くてつらくて、大変な事かがわかります。
不屈の闘志でアメリカを横断したボブでさえそうなのに、水木さんの文章はとても軽い。
人生観が普通と異なるんでしょうね。
「不思議な物語」は「不思議な人」だから書けたのだろうと感じました。
水木さんの人生に比較して、自分は恵まれている。
そして50代半ばになっても今だ貧困を恐れ、人生をどう過ごすかに思い悩んでいるなんてバカな話です。
それから、自分だけが貧乏なのではなく、周りがみんな貧乏だり、傷痍軍人もめずらしくなかったという時代もあるでしょうが。
その日を精一杯生きる人、好きな事をしている人、自分の人生を自分で決めることができる人、何をしても生きていける自信のある人には遠い将来に不安を感じる暇がないという事でしょうね。
少しは見習いたいです。