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ネットニュースではわからない本当の日本経済入門

 

ネットニュースではわからない本当の日本経済入門:伊藤元重先生

コロナ禍により20年度の経済成長率が-3.3%。
30年の世界大恐慌に次ぐマイナス成長だった。
私の知る世界大恐慌は、衣食住もない失業者や浮浪者
浮浪者が溢れかえる悲惨なイメージ。
だから世界大恐慌以来の不況と思って1年前にベアファンド
を買ったのに今やアメリカでは人手不足で給料が爆上げしてい
るのに、職に就かない人が何百万人もいるというではないか。

筆者は経済が悪化しているのに株高となっている現状を
「異常」とし、21年度の経済成長率が6%と予測される事から
経済回復による金利上昇が過度に進むと株の下落になると言う。
「過度とはどれくらいか?」が興味深い。
FEDは22年度中に3回利上げするとコメントしている。
それにより株が一時急落したが、このレベルですむだろうか。
アメリカの利上げで困るのは発展途上国
発展途上は巨額のドル負債があるので利上げは財政危機を招く。
また、ドル利上げはドル高となり、途上国通貨安につながる。
日本は金利が上がらないし上げられないので、日米金利差により
円安になる。
途上国もコロナで不景気となり金利はあげられない。

現状コロナ禍により世界が財政出動で赤字を垂れ流している。
筆者はいずれ財政規律を元に戻す必要があるという。
コロナ禍は戦争であり、戦後復興が必要。
EUは気候変動対策で戦後復興投資を行おうとしている。
そうか!単に気候変動対策ではなく経済に新たな活力を
与えるための復興財政出動の側面があるのだ。
だから、アメリカも中国も参加しているのだ。
つまり環境対策投資をしないと経済活性化に乗り遅れるという事だ。
ニューディール政策ではなくグリーンディール。

しかし環境対策とはエネルギー革命をいみするのではないか?
最近原油価格が90ドルを超え、激しいインフレが始まった。
庶民は物価高により生活困窮が予測されている中で、
クリーンエネルギー価格上昇にいつまで我慢できるだろうか。

巨額の財政赤字を抱える日本は、戦後復興の財政出動金利上昇
により新しいステージに入ると筆者は言う。
それは正統で高齢の学者らしい控えめな表現なのだろう。

経済回復は「需要」と「供給」のバランスである。
アベノミクスは需要を拡幅させたが、供給は回復していない。
供給とは生産性の事だそうだ。
生産性が低いから給与が伸びず、需要が爆発しない。
企業は投資をせず現金をため込み、国だけが投資を続けた結果、
財政赤字が膨らんでいる。
もちろん財政赤字は高齢化による社会保障増大の要因もあるため
仮に生産性が上昇しても課題は残るだろう。

バブル崩壊後低迷したGDPを上昇させたという点においてはアベノミクス
は成功としている。
筆者は経済成長をGDPで説明している。
ネットとグロス、為替の影響を認めつつ、30年スパンの国ごとの比較
を行うならGDPが最も適切な指標だとの事。
一方で一人当たりGDP比較では、ブータンは中国の3割以下であり
幸福度と経済の豊かさは違う事にもコメントしている。
現在のネットの世論を認識したうえで最大公約数の説明をしているようだ。

日本はバブル崩壊後の経済成長を回復するのに20年かかったのに、
世界はコロナ禍回復を1年で達成する。
この違いは「金融危機が起こらなかった」からだという。
そうであれば、実体経済が好調でも金融危機が始まれば不況は長期化する
という事であり、金融に実態経済が振り回されるという事だろう。
古典的金融の役割とは、資金を必要としている企業にお金を融通して
適切な成長を促す事ではないのか。
金融が逆に正常な経済を悪化させる事は本末転倒ではないか。
金融とは博打ではないか。
日本の年間輸出額=為替市場の2日分
つまり為替は輸出入と関係ない。


GOPに対する各国企業の手元資金は、欧米がほぼ0%に対して、
日本は2.6%。2010年代には8%なので低下しているが、それでも高い。
欧米企業は手元資金があれば、「配当」「投資」「給与引き上げ」
を増やす。
日本はいずれも増やさない。
日本のGDP付加価値の占める割合において、製造業は2割。8割は3次産業。
1次産業はほぼゼロ。
確かに自分の家計支出を見れば、家賃、通信費、学費、本が高い。
食費の多くは輸入なので付加価値は低いだろう。
我が家は関係ないが、旅行、コンサート、病院も多いだろう。
家電、車、服など製造物は買わない。

「供給力」について。
「供給力」≒「労働力」+「資本ストック」
労働力は少子化により減少している。
移民受入れは政治的混乱や紛争を増やすので個人的にはNGだと感じる。
日本の同質社会では移民自体も幸せになれないように感じる。
資本ストックは過去20年間投資不足。
だから世界の中で日本の供給力は相当低下しているだろうし、
今後も増えると思えない。
過去の投資不足の蓄積が埋められていない。
高齢者の貯金を投資に回して供給力を増加させる。
しかし、物は安く溢れており供給不足を実感できない。

需要があっても供給力がないなら輸入が増加するのでは?
これは製造物に限らずサービスでも起こる。
それがネットフリックスやSNSサービス、医療サービス
、美容健康サービスだろうか。
日本人は何を需要しているのだろうか。

供給サイドの主役は企業だそうだ。だから政府が幾ら
TPP、法人現在、経済特区など政策を動員しても
企業が投資を行わないと供給生産性は高まらない。
として供給力の弱さを政府でなく企業の責任にしている。
しかし、企業は物が売れないから投資しないのだ。
何が売れるのか?私は物はいらない。「知識」「生き甲斐」
「楽しさ」「健康」「安心」を感じるもの。

国の財政は社会福祉赤字国債返済が主であった。
だから政府自体が全くDXしていないし公務員の生産性が低いのだろう。
各種届出や議員の生産性は低そうだ。
企業は人件費削減や海外から安いものを調達する事に励み。
資本財への投資をしていない。
会社でもDX化されておらず、依然として伝票や稟議書のハンコ文化だ。
キャッシュレス化もせず、高齢者が銀行の窓口に列をなしている。
遠隔診療も進まない。
つまり国も企業も30年間投資を怠ってきた。
個人が出来る事は、個人の投資、DX化だろう。
そして生産性の高い企業への株式を通じた投資により恩恵を得る事。

潜在成長率について
潜在成長率=労働分配率×労働の増加量+資本分配率×資本増加率
+全要素生産性
全要素生産性TFP=技術革新や社会制度などブラックボックス
だったら潜在成長率は算出不能じゃんか?
賃金を上げて労働者を増やすには、女性や高齢者も働き、賃金を上げる。
でも賃金上げると経営者はリストラしてDX化や派遣化するよね。

TFPがなければ、経済成長率は労働分配率と資本増加率だけで説明できる。
先進国の成長率の約5割はTFPだという。だったら5割はブラックボックスという事。
TFPを上げるために技術革新や導入が必要。
先進国は労働力が増えないし、資本蓄積も限界低減しており技術革新しかない。
現在の日本のTFPはほぼゼロ。絶望的。
東南アジアの奇跡も労働力と資本増加だけであり、TFPが無かったから
直ぐに頭打ちになり、無残な結果となった。

著者は過去の日本の潜在成長率を見て「ひどいものだ」と珍しく
感情的に表現している。
1%以下で推移し、直近はほぼゼロ。確かにひどい。未来はないと感じる。
人口が減り、少子化で労働者が減り、働き方改革で労働時間が減り
企業は投資をしておらず、お金をため込んで労働者に払いもしない。
国や社会基盤はDXやキャッシュレス化が遅れ、規制緩和がなされず
自動運転やドローンも進まない。
生産性の要素の全てが減少傾向だ。

筆者のコメントは平凡だが真実を表現している。
企業はビジネスモデルを変革するためDXにどう取り組むのか。
小売はアマゾンにどのように対抗するのか。
金融はどのようにフィンテックを進めるのか。
作業現場ではロボットやRPA,データ活用をどうするのか。

低成長デフレ化の日本では生産性の低い企業が生き残った。
セブンイレブンは世界有数の高い生産性。
一方で小規模小売業は低生産。
過去30年適切に成長していれば消滅していた企業が残っている。

インフレへの備え
著者が20年前の高校の同窓会でアドバイスした事。
「インフレには気を付けよう」それから20年デフレが続いている。
貯金の無い若者はインフレが怖くない。
高齢で貯金や年金に頼って生活している人にとってインフレは怖い。
父親が定年前の部長の年収を、娘が超えてしまうのがインフレ。
1974年の日本のインフレ率は25%。1年で貯金の価値が-25%。
オレオレ詐欺は個人の老人から資産を奪う。
インフレは全国の老人から正々堂々と合法的に資産を奪う。

国の借金はインフレで帳消し。これしかない。しかし急激に進まない
事もある。20年間3%のインフレで少しづつ借金の価値を下げる。

過去戦争後は大きなインフレが来た。コロナは戦争と同じだ。
日本でもインフレは何度も来た。
・・・つまり著者はインフレが来る可能性が高いと感じているのだろう。
私も同感だが、過去30年間そう考えて、オオカミ少年になっている。
慣性のエネルギーが溜まるほどその反動は大きくなるかもしれない。
過去20年間、結果として貯金はベストな選択だったとしている。
しかし今後もベストとは言えないとしている。
貯金、株、為替、不動産、全ての資産にリスクがあり、リスクから
逃げる方法はない。
ドルに投資していても、日本の海外投資資金が日本に引き上げられれば
為替はドル売り圧力を受ける。つまり考えるほどドル高にならない可能性。
庶民にできる事は分散投資。DX化により庶民でも分散投資が可能となった。


働き方改革が進まない理由は「制度的補完性」
つまり企業が人事制度を変えるだけでは進まないという事。
4月一括採用→教育制度
女性活躍→家族の在り方、税制
高齢者活躍→年金社会保障制度
年功序列実力主義儒教的社会観、
忠誠心とポータブルスキルの両立。
総合職制度の廃止、単身赴任問題。
企業のビジネスモデル

景気低迷⇔金利低下⇔財政赤字維持可能
景気低迷⇔資金が滞留⇔国債購入

つまり景気が好転して金利が上がれば財政危機。
国の債務は1千兆円、1%の金利は10兆円相当。
日本の税収は60兆円なので、金利が2%上がれば税収の3割が
国債返済になる。
国債の利回りが2%になると、消費税8%に相当する。
著者は消費税率引き上げ派。海外比較。

一般的な財政削減策(IMF
社会保障や教育削減。水道や道路削減。
警察や公務員削減、公務員給与削減。
増税

ピケティ
①真面目に収入から返済する
 難しい。低所得層の生活基盤危機。歳出削減や増税が大きすぎて政治的に不可能
②インフレで借金帳消し
 ①よりましだが国民の混乱と生活苦を招く。
増税
 欧米の超富裕層への課税。資本は労働より増えるので。資産を放置
 すれば格差が広がり続ける。 おすすめしている。

著者のおすすめ
現在貯金の半分は65歳以上が保有している。
数年後からは毎年10兆円の金融資産相続が発生する。

人類は産業革命以前は経済成長していない。
西暦1年のギリシャ庶民と、西暦1000年のフランス農民の生活は同じ。
ところが産業革命以降は持続的成長期になった。

過去40年で世界の貧困は40%から10%へ改善した。
全体で見れば貧困は減っている。

資本主義→勝者総取り
民主主義→一票の価値は等しい
安定化装置→公的社会保障累進課税、教育無償化

英国の産業革命ブルーカラーの所得は50年間に半分になった。
資本家の所得は天文学的に伸びた。暴動の多発。
資本主義が力を増すほど、格差が広がり、社会は不安定になる。


経済学は平時の学問。効率的市場仮説が有効。
実体経済は10年ごとに危機を迎えている。
危機の後は経済体制が変わる。行動経済学が有効。

金利がゼロという事は、貯金の金利割引率がゼロであるため
株式が値上がりしなくとも貯金と比較してリスクが同じ。
金利が3%なら、株式が値上がりしなければ株式のリスクが高い。

仮に今がバブルでなくとも、金利が上がれば株は下がる。

コロナ危機で日経平均は1年で2倍になった。
経済成長もマイナスからプラスになった。
インフレが始まり金利も上昇局面である。

地震がいつくるかわからないが平時に準備が必要。
株下落への準備も必要だと締めくくっている。