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黄禍論

 


東洋経済において、世界と日本の近現代史がわかる60冊
が特集されていた。
まず手始めに「黄禍論」廣部 泉 氏著を呼んでみた。

高校教科書の第二次世界大戦の部分を見ても、「人種差別」というワードは一度も出てこない。

教科書では遅れて植民地主義を進めた日本が先にアジアで植民地を築いた欧米との資源獲得戦争に敗れたことになっている。
事実であろうが、そこには白人による黄禍論の潜在意識も含まれていたのだろう。

そして黄禍論は昔の話ではなく現代にも生きている。
例えば日本の高度成長期。
1970年の日本→アメリカの繊維製品の輸出WTは25%。
西ドイツ→アメリカは22%

同じく日本車は30万台だが、ドイツは60万台の対米輸出台数。
しかし、ドイツには貿易制裁が科されず、製品をハンマーで壊すこともなかった。

このころライシャワーが新聞に寄稿した内容。
日本人の工業技能に中国が加わり2国が一体化すれば世界経済を征服できる可能性があるとしている。
これは第二次大戦時に、日本の将兵に中国人が指揮されれば軍事力において欧米を上回ると言っていた事の経済版だろう。

日本+中国=優秀な工業力+膨大な市場と労働力だけでなく、黄色人種の台頭を意味している。

副大統領のモンデールの演説では、日本人がアメリカ製品を買わないなら、横浜港に米軍と一緒に入港すればよいと語っている。
流石にワシントンポストは「恥を知れモンデール」と記事にした。
ドイツを叩くより日本を叩いた方がアメリカのブルーカラー層には受けるという人種差別の本質が窺える。

それを指摘したのは黒人のアメリカ人。
アポロ劇場の所有者は「日米経済摩擦は単なる経済の事だけではない。
ちびで褐色で釣り目の猿に自国企業が買収されることが感情として許せないのだ、だから日本の2倍車を輸出しているドイツではなく日本が攻撃されると解説している。
ソ連にスクリューを販売した東芝は制裁されるが、同じノルウェーは制裁されない。」と実例を挙げている。

日本の通産大臣も、日本攻撃が度を越して激しいのは、人種差別感情も含まれているのではないかとコメントしている。

インドの新聞の記事。対米投資額の1位は英国の4,000ドル、2位がオランダ。
3位が日本の2,500ドルなのになぜ日本だけがロックフェラーセンターやコロンビア買収投資を攻撃されるのか?と書いている。

アメリカの通商代表代行は、西洋の国々が日本ほど経済大国になっても脅威は感じない。価値観の異なる顔の見えない異質な日本が経済大国になる事には脅威を感じると答弁している。

日本は利己的な経済利益のみを追求し、外交思想や国としての目的はなく、個々の民間企業が蟻のように世界を食い尽くす、欧米の民主主義国家とは異質。

冷戦は民主主義VS共産主義だったが、冷戦が終結した時、人種間の争いが起こると「文明の衝突」でハンティントンが論じてワシントンで一世を風靡した。
人類は常に何らかの対立軸を作り出して争うものなのか。

アメリカの人種差別で最重要は黒人差別だが、これは国内問題。
そして911テロは中東人種差別だが、これは資源戦争。

日本や中国人差別は経済と安全保障問題。
アメリカで人種差別が起こるたびに「自分の国に帰れ」論がでる。
最近ではトランプによるメキシコ移民帰れ発言が有名。


2002年のSARSは広東と香港で流行し、その後トロントで流行した時にはアジア人差別が行われた。
バスや電車ではアジア系の隣の席だけが空いている。
乗車拒否も発生。
当時NYでは感染者が一人も出ていないのにチャイナタウンが感染源とされて封鎖された。
それより100年間にはサンフランシスコで腺ペストが流行し、チャイナタウンが発生源とされた。
今回のCOVについてもポンペイオは武漢ウイルスを連呼し、トランプは演説原稿のコロナをチャイナウイルスに自ら書き直している。
最初のウィルス発見が武漢だとしても、ウィルスが人種によるものだとイメージさせる発言が多い。
日本でも蝙蝠や蛇を食べる中国人が新種のウィルス発生源になるとの論説があったので、白人と黄色人種の差別だけではなく民族差別と相まって人類の本質かもしれない。

中国でコロナ死者の追悼式が行われているニュースについて。
フランスのTVはピカチュウの埋葬をしていると報じた。
全身黄色で小さなピカチュウを黄色自主に例えたのだ。

日本経済が凋落し、脅威でなくなった後、民主政権時には、鳩山氏や岡田氏が東アジア共同体構想を発表したが、アメリカの妨害により頓挫した。アジア通貨危機の時にはアジア通貨基金を日本が主導しようとしたがこれもアメリカに潰された。
日本人からすれば、地理的に近く、地域平和と経済共同体であるためアジア共同体に人種的意図を感じないが、欧米からみればアジアの何らかの共同体は人種による団結を招き、欧米が排除されるという脅威を感じるものなのだろう。

欧米にとってアジアはできるだけ言う事を聞いて服従する地域に留めておきたい地域だろう。

人種差別を掲げるナチスの台頭を許したことが悲惨な第二次大戦を招き、多くの米国の若者が犠牲となった教訓から、現在の米国では公然と人種差別を表明する事は許されない。
しかし、経済危機、雇用喪失、コロナ禍など危機的状況になる度に潜在化している人種差別が現れてくる構造。

欧米人の多くは東洋人を理解しにくい不気味な存在と認識しており、人口の多さもあって東洋人が団結する脅威を感じている。
多様性や自由が大切だと頭で理解しても感情は別なのだろう。
日本は明治以降、欧米に産業も文化も学び、鹿鳴館でダンスを踊り。
ロシアや中国と戦って勝利しし、国連で常任理事国になった。
しかし、パリ講和条約では人種差別撤廃案が否決され、東洋人の排斥移民法が制定されたとき、人種差別の壁を認識してショックをうけたのである。
努力して結果を出しても対等にはなれない。
それが大東亜共栄圏思想となった。

トランプにより公然と国のトップが人種差別的発言を行った事で現在のアメリカは人種差別感情が出ている。

1982年、自動車の町デトロイトで結婚を控えた中国系米人男性がクライスラーの工場につとめる白人親子にバットで殴り殺された。
日系人と間違われた。
裁判の結果は執行猶予3年。罰金30万円というとんでもない軽い刑罰であった。

後書きがわかり易い。
アメリカの白人が、イスラムアメリカ人のコミュニティで生活してみるTV番組があった。
日本の大学生の感想は。①白人は人種差別意識がある事を認識した。
イスラム系でもテロに関係ない普通の人が多いどちらでしょう、答えは②。つまり日本の大学生は白人目線。
みずからが有色人種で差別される側だと認識していれば、①の感想を持つはず。
つまり、アメリカの白人は今でも宗教や肌の色でレッテルを貼って差別していると認識しなければいけない。


黄禍論の始まり。
1893年ピアソンが中国を念頭に描いた本。
中国は人口が多い、過去に高度な文明を築いていた。
アヘン戦争に対する復讐心がある。
だからいずれ中国人が欧米に復讐するだろうという内容。
欧米では新聞や雑誌がこぞって取り上げた。
後に大統領となるルーズベルトが異例の長文書評を原稿している。

ピアソンはアジア圏のオーストラリアの大臣。
白豪主義を形成した。

次に同時期にドイツ皇帝ヴィルヘルム2世
ロシア皇帝ニコライ二世の従兄弟)
ヴィルヘルムは黄禍論を象徴する絵を描かせた。
東から迫る仏陀に女神が対峙する絵。
宗教画によって人種を現わしているのが面白い。
中国は必ずしも仏教を大切にしている国ではないと思うので象徴として仏陀を使うのは違和感がある。

急速に台頭する日本が、中国を目覚めさせる。
或いは、日本の将軍が中国兵士を指揮して欧州に攻め込むような説が流行った。
当時中国だけで世界の3割の人口。

雑誌「太陽」に近衛篤麿の「同人種同盟」が掲載。
貴族の名門近衛家当主で貴族院議長の篤麿の影響。
最終的には黄色人種と白色人種は生き残りをかけて争う。
ここに黒人は入っていないのは当時黒人は人種として劣ると考えられていたのだろう。
この論説は欧米で反響を呼んだ。
中国で4億人。日本で4千万人。これにインドの3億人を加えれば危険。

ここまではアジアと地続きの欧州の危機感。

アメリカにおいては移民による黄禍論。
カリフォルニアのゴールドラッシュと大陸横断鉄道建設の中国移民。
1882年にアメリカへの中国移民が禁止、中国移民排斥法。
当時日本は貧しく、地方の農家の次男以下は相続で農地が細分化されることを防ぐため家では飼い殺しになっていた。
そのため豊かなアメリカを目指した。
次いで1924年に実質日本人だけを対象とした移民排斥法が成立。
結局南米へ移民先を変更する事になった。
安い賃金で働き、白人の仕事を奪い、みすぼらしい生活で
お金をためて、同人種で固まって住む。
その後、1876年にサンフランシスコで天然痘が流行。
400人以上が死亡、市の衛生責任者はチャイナタウンが原因だとして封鎖した。
1900年にも同様の事があり、チャイナタウンから白人が退去命令が出されたが、中国人は一切出る事ができなかった。
人種と病原菌を結びつけた措置。
1880年代のアメリカ。ダーウィンにより、アングロサクソンが優れた人種であり、世界に広がるのが当然といった思想。
野蛮な他の人種を文明化させ、キリスト教化させることが劣った人種のために必要と考えていた。

この頃、アジアの盟主として急速に軍国化していった日本と、
アングロサクソン新興国としてのアメリカがいつかは対決することになると予想されていた。

近衛が中国を訪問する際に、欧米の新聞は日中同盟の危険性を報じている。

ロシアの立場
領土の大部分がアジア。白人だがアングロサクソンではなくスラブ系。日本と対決するためには、白人世界を味方につけたい。
白人のためにアジアからの侵略の防壁になるのがロシアだとのポジション。

一方、日本も黄色人種の代表とされて白人全体を敵に回したくないし、当時日英同盟がメインであったので、清国との同盟はしない。

日露戦争で日本が優位になったころ、欧米では黄禍論が再燃。
もし日本が勝つと、白人優位が崩れる。
黄色人種が自信を持ってしまう。
インドのネルーは、日本人にできるならインド人にもできると考えた。
トルコではトーゴ―(東郷平八郎)という男児の名前が増えた。
日露戦争を人種戦争であると論じる欧米の大学教授が多かった。
戦時における国の共感は人種を超える事はない。
モンゴロイドによって白人が大陸の端に追いつめられる。
「日本によるアジア合衆国」「中国軍を率いる日本人」

日本海海戦で日本が勝った時、同盟国のイギリス市民が悲しんでいたことを
留学していた孫文は書き残している。
当時イギリスはロシアの極東での拡大を恐れて日本と同盟していたが、
日本の拡大は望んでいない。
日本が勝ったころからアメリカでは黄禍論が増えた。
日本人が中国軍を教練する。
中国の出産可能年齢女性は5千万人いるため、毎年2千万人の兵士を出産できる。
同じく5千万人の労働男性人口が兵器を創る。

ロシアに勝利した軍事力。
中国と同盟すれば凄い人口。
西海岸では労働者が職を奪われていた。

当時日本政府は黄禍論を恐れて清国に中立を要請、在外公館に人種的戦争論の広がりの防止を命じた。

第一次世界大戦後に国際連盟が創設された。
戦勝国の中で唯一の黄色人種である日本は、人種差別によって、既存の欧米中心の植民地支配の地図が固定される事を避けるために、パリ講和会議で人種差別撤廃条項を
設定することを求めた。

しかし、日本人移民に仕事を奪われていた西海岸のアメリカ人や、植民地勢力地図を維持した欧米によって阻止された。

日本では政財界や著名文化人による人種差別撤廃運動が盛んとなった。
そのため国際連盟からの脱退もやむなしとの世論があった。
朝鮮人や中国人を差別している日本人が、有色人種差別撤廃を求めるのは、利己主義的だろう。真の人種差別撤廃を求めているのではなく、自国が有利になる事だけを考えているとアジアから批判されていた。
一方、有色人種差別の残るアメリカでは。国連の差別撤廃により、移民が増えればアメリカの国内法と矛盾が発生する。

その後、カリフォルニア州では日本移民による土地私有の禁止法が出来た。

現在の日本で中国資本の土地制限が検討されているのは立場を変えて民族差別だと言える。

欧米から見ればアジア人種の大合同に脅威を感じているだろうが、一口にアジアと言っても日本は中国や韓国との民族差別感情を相互に抱えており、中国内でさえモンゴルやウィグルという人種問題を抱えており大合同など考えにくい。

池上彰氏がシリア難民キャンプを取材した時に、シリア難民の子供から目の端を釣り上げてからかわれた経験を紹介していた。

子供は正直で残酷、自分と異質なものに対する拒否感は本能なのか。

白人と有色人種の差別だけでなく、有色人種間の差別も同じくらい多い。

 

戦後、共産主義の広がりを防ぐために日本を仲間に引き入れたアメリカが、冷戦が終わり経済が問題になると貿易戦争相手となった。

そして中国が経済力と軍事力を増強させるとまたアメリカは日本を仲間に引き入れようとしている。

ベルギーがルワンダを植民地化するまでは、ツチ族フツ族に民族差別はなかった。

ツチ族の方が花が高く白人に近い事から、ベルギーはツチ族を支配民族に優遇したため民族差別が始まった。

植民地支配の一つの手段として、支配地の中に差別階級を設定して支配することが多いが、世界中に民族差別をばらまいた植民地政策の罪だろう。

日本と中国を接近させず、敵対させる事で欧米はアジアでの影響力を維持している。

ここにインドやタイ、インドネシアが加われば各国を融和させたり争わせる事で影響力を維持してゆくのだろう。

ウクライナを助けない米国が日本のために米軍を積極的に展開するとは思えない。

極東のちびで黄色い目の吊り上がった何を考えているかわからない奴のためになぜ白人米国人が大金を使って命の危険をさらして守らなければならないのか?

日本と中国が戦争して死者が出ても、ピカチュウライチュウが戦って死ぬようなもので飼い主からすれば多少憐みを感じるだろうが1カ月もすればアジアで新しく家来を見つけるだろう。

欧米の価値観も多様であり、常に色んな意見を持った人がいるし、危機時と平和時でも大きく方針が変更されるから、その時々で国際情勢を分析して対応する必要があるあろう。

政治家や官僚に任せる事なく歴史を学び、国家、民族、個人として安全を確保して生き延びてゆく必要があるだろう。