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映画北斎

 

映画 北斎

 

私の期待からは外れていた。

北斎と言えば①作品 ②破天荒な人生  の2つが話題ですが、この映画では①の作品はあまり出てこない。

そうすると②であったり、作品が生まれる背景を表現したかったのかと思いますが、それも伝わらない。

北斎は7歳から90歳まで絵を描き、その版画は膨大な量であり、海外でも人気がるのだから、作品を前面に押し出した映画にしても良かったのではないか。

絵そのものの著作権は切れていると思いますが、その写真自体に著作権があるといった理由でもあるのだろうか。

絵を中心にした場合は、北斎の人生やトピックは薄まってしまい、ドラマ性がなく退屈な解説映画になってしまうのでしょうか。

作品が生まれた背景をその生き方から見せようとしたのか。

それにしてももう少し解説を入れないと、前提の知識がないと映画ではサラッと流れてしまう気がします。

例えば映画では100物語の最中に歌麿が逮捕される話がありますが、どうせなら当時の江戸の100物語がどんな風習だったか、そして北斎のこはだ小平次くらいは映してくれても良かったと思う。

第一部で人物画では同時代に写楽歌麿がいたため勝てなかった事は有名ですが、それは伝わったのでしょうか?売れる絵ではなく、描きたい絵を描くという表現で終わっている。

北斎が旅の途中で大木の大きさを図るために木に抱き着くシーンがありますが、あれは「甲州三島越」ですよね、だったら絵を映そうよ。

できれば当時歌舞伎が流行していて千両役者などは今で言う年棒数億円のプロ野球選手のポスターのようなものだった。

そして吉原は風俗街というだけではなく、当時の原宿のようなファッションと文化の発信地であり、花魁はスターモデルだった事。

だから役者や花魁の魅力をデフォルメした絵が売れたという事。

だから人物画では歌舞伎の見栄や花魁の着物をでふぉるめしているし、風景画ならその土地の名所をデフォルメするので写実的ではなく変わった構図になっている事。

人物画を諦めて山野を彷徨い風景画を描くことに行きつく過程はちょっと伝わらない。北斎が子供の頃に描いた富士山を見たことがあるが、そもそも原体験として風景画があったのではないでしょうか?

脳卒中になって復活する過程が書かれていない。旅にでるのはわかったが、自分で作った薬で治り、その薬を販売した逸話などを入れると面白いのではないか。

富嶽三十六景の頃には一番の人気画家だったのだから、その人気ぶりを描いてほしい。旅行ガイドブックや江戸土産として人気であった事を描いてほしかった。

当時画家の取り分は初版のみで著作権は版元にあったので、重版しても画家には一文も実入りが無いため、人気画家でも富豪にはなれない事とか、お金に無頓着で掛けで買った支払いは中身も見ずにそのまま版元から貰った袋を渡していた事など。

当時浮世絵は500円くらいで明治維新で歴史から姿を消したが、明治以降、日本から欧州に輸出した陶器の緩衝材として入っていた浮世絵を見た欧州で人気が出た事なども挟んでもよかたのでは?

北斎の作品と逸話は膨大過ぎて映画に入れ込むトピックスに限界があるとは思いますが、北斎が世界に与えた影響、なぜ北斎は死ぬまで絵のスキルを向上し続けたのか、当時の江戸の風俗、浮世絵は芸術としてではなくブロマイド、ポスター、挿絵といった物であった事。プルシアンブルーをなぜ使ったのか。浮世絵は彫師や摺師との共同作業であり、精巧な技術が必用だった事などもっと知識として残る内容を期待していた。

ちなみに文書を描いた後でネタバレをググったら私と同じような感想が並んでいたので私が辛口というわけではなさそうです。